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4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
そうでありえたかもしれない自分へのレクイエム,
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レビュー対象商品: 「三島由紀夫」とはなにものだったのか (新潮文庫) (文庫)
著者・橋本治は、『金閣寺』を31歳で書いた後の三島について次のように書く。「三十代の間、三島由紀夫はなにをしていたのか?私は、遊んでいたのだと思う。(中略)三島由紀夫は円熟していたのである。円熟していたから、遊んでいるだけでよかった。つまり、三十代の三島由紀夫は、もう自分のことを『ああだこうだ』と考えなくてもよかったということである。」(349頁) ここで、橋本治31歳の終わり、1980年2月に刊行された評論集『秘本世界生玉子』の結び(あとがきの前・初版本377頁)から引く。 「 つまり、言えることはサ、僕等の前にゃ、今はナァーンにもないってこと。/ なくてもいいんだ、生きてるから。天国だって、多分なんにもないんだよ。でもサ、僕は分るんだ。多分僕達は、ズーッと天国にいたって、絶対に退屈なんかしないってことを。/ 僕は一生、死ぬまでズッーと、遊んで遊んで、遊び続けるんだ。(後略)」 『金閣寺』『秘本世界生玉子』、ジャンルは違えど、ともに「行き着いた感」のある作品である。 橋本治は、本書で三島への距離感をしばしば強調するが、そのじつ、それぞれの行き着いた地点から出発して、三島は袋小路に進み、自分は生還した、と捉えているように思われる。 これは、そうでありえたかもしれない自分へのレクイエムである。
33 人中、27人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
その人の名は,
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レビュー対象商品: 「三島由紀夫」とはなにものだったのか (単行本)
本書が出版された時、橋本治と三島由紀夫の組み合せから予想されるくどさに恐れ入り、 正直言って私は敬遠しました。しばらくして 偶然一部を読んでみると、予想に反し大変気 持ちの良い印象で、驚き通読してしまいまし た。 橋本治という人は、自分の中から沸きあが った疑問に、自力で考え、それを自分の言葉 で語ってきた人です。既存のものに頼らずに 自力で全てをカバーする、というその膨大な 自力主義が、往々にしてくどいという印象を 与えます。それが本書では、書く対象の三島 の壮大さと大変バランスが取れていて、読む 者につらさを感じさせません。 この本で語られることは、今となっては何 がなんだか分らない、自衛隊での割腹自殺と いう壮大な額縁を最後に自ら用意しなければ ならなかった、三島由紀夫という「近代知性」 の空しさの理由です。その理由は本書を読む のが一番よく分る筈ですが、簡単に言うと、 知性と肉体という外だけを鍛え上げてしまっ た、三島の内の臆病さでしょう。 何より本書が素晴らしいのは、三島の臆病 さを説く著者の心の有り様です。かつてこの 作家がしばしば見せた、不用意な他への咎め 立てが本書には希薄です。ものを書くことは、 詰まるところ自分自身を語ることだ、とはよ く言われますが、「かつての自分にもあった かもしれない、『空しさ』に進んでしまう可 能性」を語る、優しいという言葉を使っても いいようなスタンス自体が、三島に対する何 よりもの批評と言えます。 三島由紀夫を語って幸福を予感させる本な ど、そう滅多にありません。三島の至れなか った豊饒がここにあります。著者名とタイト ルとからつい敬遠してしまっている方にこそ、 ご一読をお勧めしたい一冊です。
16 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
三島由紀夫への挑戦状としての本書,
By 尚華 (名古屋市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 「三島由紀夫」とはなにものだったのか (新潮文庫) (文庫)
三島由紀夫という作家は全ての価値観に対する挑戦者として文壇の歴史のみならず我が国の歴史にもその名を長く止めるだろう。そして、その熱心なる読者もまた、三島由紀夫に対する挑戦者となる運命を負わされているのである。著者の橋本治氏もまたそのひとりとして、この挑戦を本書において挑んでいる。本書は、極めて論理的に三島の著書の論理を個々の作品にわたって解体し、その欺瞞性を暴露し、三島氏自身の持つ内面の脆弱さ、しかしそれさえも文学的には「繊細さ」と読み替え可能である、を摘発している。本書の前3分の1ほどはその試みが成功しているかに見えるが、それ以降についてはマンネリに惰してしまっているかに見える。橋本氏はこの試みの中で敢えて「敗北宣言」を吐露しているようにも見えるが、正統な三島文学の読み手としての賞賛には十分に値するだろう。すなわち、本書は三島文学解題の重要な橋頭堡として、三島文学愛好家の必読書と言えるであろう。果たして、橋本氏のこの力作を読んで、私の中で果たして今後三島文学を越える小説家は登場できるのであろうか、という疑問が生じた。三島由紀夫は将来の読者や「小賢しい」批評家達に対しても挑戦を突きつけたのであろうか。
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