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39 人中、33人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
<ほんものの自己>のナルシシズム化を問う,
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レビュー対象商品: 「ほんもの」という倫理―近代とその不安 (単行本)
原作は91年のラジオ講演だが少しも古くない。現代の我々は「人まねではない個性的な自分」でありたいと思い、「自分らしい人生」を生きたいと願っている。著者はこれを「ほんものauthenticity」の自我への希求と捉え、デカルト、ルソー、カントと続く西洋近代の最良の遺産として強く肯定する。だが、自己決定的自由に立脚する「ほんものの自己」は、自己を越えた価値の地平や他者との対話の契機が弱まると、ナルシシズムに陥る可能性がある。その分岐点を著者は、何かの手段ではなくそれ自身が目的になる「美意識」の成立(『判断力批判』)、人それぞれの「自分らしさ」を推奨したヘルダー、美的全体性を道徳と対置したシラーなどに見る。美少年ナルシスの名を冠した「自我のナルシシズム」は美の自立と連携しており、芸術家の創造活動をモデルに「個性的な自己」が理解される。「自己発見にはポイエーシスが必要」なのだ(p86)。本書の核となる第6章「主観主義へのすべり坂」で著者は、「ほんものの自己」のナルシシズム化を進めた要因の一つに、ニヒリズムを背景とする「高級な文化」路線を挙げる。そして、自我のナルシシズム化に「深遠な哲学的正当化の粉飾をほどこした」(p83)思想家として、ポスト・モダンの元祖ニーチェ、無際限の自由の感覚を抱かせる「自由な戯れに興じる」デリダ、「自己の美学に酔いしれる」フーコーらが槍玉に挙げられる。このあたり、いかにもコミュニタリアンらしい保守性には違和感を感じるが、ナルシシズム化を憂いつつ「ほんものの自己」という理想を探究する姿勢に、評者は大いに共感を感じる。
14 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
内なる道徳的要請、の詰めの甘さ,
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レビュー対象商品: 「ほんもの」という倫理―近代とその不安 (単行本)
テイラーの擁護する<ほんもの>という理想は、端的にまとめれば「自分自身の内なる道徳的要請に忠実になり、自己達成を目指すようにせよ」となるだろう。そして、そうした<ほんもの>への批判を再反論していく形で<ほんもの>という理想を擁護する。 まず、<ほんもの>という理想、を穏やかな相対主義やナルシシズムへと結びつくとして批判する人々、具体的にはブルームやベル、に対しては、その批判は<ほんもの>という理想の堕落した形態を批判しているにすぎないとする。自己の道徳的要請は、好き勝手な欲求とは異なるものであるし、また他者との関係も自己達成の本質を占めるため、他者を軽蔑的に扱うナルシシズムとも異なると論ずる。 一方で、<ほんもの>という理想の堕落そのものも厳しく批判し、<ほんもの>という理想がきちんと実現されるように呼び掛けていく。 さて、筆者の論の弱さは、<ほんもの>という理想、が積極的な形では定式化しきれていないことであろう。 堕落した形態のアンチとして形作られ、また「道徳」や「理想」という表現を付加することでしか特徴づけられていないため、具体的に<ほんもの>という理想がどのようなものなのかがはっきりしない。そのため、批判されるようなものを「堕落した形態」として切り捨てているだけとも受け止められてしまうだろう。 そしてそもそも自己の道徳的要請に従って、というのは、まさしく「自分が善だと信じるところが善だ」というムーア的な主観主義的倫理論に(堕落でも何でもなく)陥っているといえるだろう。 そもそもそうやって純粋に自己達成をしていこうとすればうまくいくというのは、いささかオプチミスティックすぎる。宗教戦争的なものは、無論利害感情もあろうが、自己の信奉するところにしたがって対立は発生しているといえる。そうした問題に対して、<ほんもの>という理想はあまりにも無力、いやむしろ対立をあおってしまう、といえるのではなかろうか。
2 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
帯について,
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レビュー対象商品: 「ほんもの」という倫理―近代とその不安 (単行本)
書評についてはいろいろみなさん書いておられるので,帯について一つ。帯には以下のように書かれています。 「今,自由で民主的な社会の存続のために何が求められているのか。共同体主義者として知られた…」 編集部は本当にこの著書の内容を知っているのか? 「自由で民主的な社会」がいつ始まったのか?理念としては近代の所産であるが,いつ実現したんだ? こんな帯ならつけないでほしい。
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