〈文学少女〉シリーズの6作目にして、初の番外編。
時系列的には「2.5巻」に相当するのですが、内容的には7作目の予告編といえます。
また、今回は姫倉家の話ということで、表向きは麻貴にスポットが当てられていますが、
実は「遠子編」といっていい内容になっています。
これまでの遠子は、いわば登場人物たちの魂の代弁者であり、彼らが
背負う、「物語」に救済をもたらすセラピストの役割を果たしてきました。
そんな因果の外側にいたはずの彼女にも、胸に秘めた「秘密」があることが今回明らかになります。
――あなたは、私を知りますまい。
引用される
『外科室』の一節が示すように、“文学少女”たる
彼女こそ、本シリーズの最後にして、最大の「謎」なのです。
では、もう一人の主人公・井上心葉は?
彼の名前を乱暴に読み解けば、井上は「イド」、心葉は「言葉」になる前の想いや気持ち、と考えられます。
つまり、作家として、あるいは人としても、他者に伝えるべき「言葉」を持たない存在であるということです。
本シリーズはそんな心葉が、遠子のみせる「月花」(≒物語)を心に宿し
ていくことで、「言葉」を獲得していく物語だったのではないでしょうか。
今回で、ある程度、行く末が見えてきた本シリーズ。
しかし、そこはサービス精神旺盛でサプライズ好きな著者のこと、きっと
また、ツイストのきいた結末を用意してくれるはずだと期待しています。